バンド活動10周年によせて

まず、自分のバンドと仕事についての話をさせて欲しい。

それとともに、あるバンドに感謝の念を送りたいと思う。

 

おれは大学を卒業したが就職はせず、将来に不安だらけのフリーター生活を続けた。

ただバンドに対する夢だけは大きくあった。

26歳で就職し結婚をしたが、相変わらずバンド活動は続けていた。

結婚してからも妻からバンドのことを咎められるようなことは全くなく、それに甘えるように、おれはバンド活動を続けた。

だからと言って仕事を疎かにしてた訳じゃない。就職してすぐにその仕事に関する本や啓発本などを読み漁った。現場ではとにかく一つ一つの仕事を丁寧にしていった。

今では部長職に就き、フリーターでバンドマンだった頃からは想像もできない程、生活は安定している。

 

バンドと仕事を両立しながらも、仕事の目標達成による精神的な充実感もあり、正直、人生の充足感を感じ始めていた。

 

でも、何かが足りないような気もしていた。

 

そのような違和感を持ちながらも、細々とバンド活動は続けていた。

 

そんな中、ライブハウスに行ってファイヤーループの野津さんや、ソーコアのカサゴさん、ビックキャットの高垣さんに完ノンの現状の活動の話をするときに、なぜかすぐに言葉が出てこないことがよくあった。うまく自分のことを説明できないでいた。

 

あれ?おれどうなりたいの?

そこから自問自答が始まった。

 

それに気付いてからは、向上心を持ってライブする他のバンドと同じステージに立つことがめちゃくちゃ恥ずかしくなった。打ち上げも出ず、早く帰りたいと思う日もあった。

 

自分の中で何が起こっているのかわからなかった。

 

もう終わっていい。

そう思うようにもなっていた。

 

 

 

そんなとき、あるバンドと出会った。

Emu sickSというバンドだ。

2016年のミソジコーリングで出会った。

メンバーと少し話すようになって、みんなはつらいと言いながらも仕事を一生懸命やりつつ、精力的にバンド活動を続けていた。

しかも売れる気満々で。
ほんとのところメンバーがどう思ってバンド活動してるかは知らないけど、このバンドの楽曲や歌詞やサウンドやステージは、一つのことを真っ直ぐに見続けることの難しさや、その先にある光の輝かせ方を教えてくれるものだった。

 

Emu sickSのファイアーバードを聴きながら、おれは自分の心の声を探った。そしてその声を素直に受け止めた。

 

「売れたい」

 

そして同時に気付くことがあった。

それは、自分の夢が叶わないことを、叶えようともしないことを、仕事を楽しもうとか、仕事を両立させるとか、自分の都合の良いように考えて、自分をごまかしていただけだったことに気付いた。

 

そこからおれはバンドと仕事を同列で考えることをやめた。

考えるべきなのは、バンド活動がうまくいかなくて、売れなくて、将来の不安があっても、そこから出てくる願いに向き合い、その願いに少しでも近づく方法を考えるべきだった。

 

そしてその行動から生まれるものが芸術であり、だからこそ人を感動させることができるとおれは思う。だからみんな聴く。だからみんなライブに来る。

 

Emu sickSが響くのはそういった理由だ。

 

おれの個人的な思いで恐縮だが、完全にノンフィクション10周年ワンマンGIGにゲストアクトとしてEmu sickSが出演してくれることは、本当に嬉しく、今回のブログに書いた内容も含め、感謝の気持ちで一杯である。

 

ありがとう。

 

そして、7/15ソーコアファクトリーに、売れる気満々の完全にノンフィクションをみんなに観に来てもらいたい。

 

完全にノンフィクション

上野友也